国道361号 姥神峠
ホーム登山道国道踏破記
◆概要
紅葉の国道361号登山道 (写真拡大
  

 
国道361号は、岐阜県高山市を起点とし、長野県木曽町などを経て、長野県伊那市に至る国道である。1975年の国道昇格以来、長らく、長野県木曽町〜塩尻市間の姥神峠と、塩尻市〜伊那市間の権兵衛峠の2ヶ所に登山道区間があったが、2002年12月に姥神トンネル、2006年2月に権兵衛トンネルが開通し、国道361号は遂に1本の車道でつながった。

ここで紹介するのは、1998年11月に姥神峠の登山道を越えたときの踏破記録である。距離的にも短く、楽に越えられるであろうと臨んだ峠越えであったが、途中、意外な形での難所が控えていた。
 

◆踏破記


1998年11月2日、国道19号を北上し、10:00すぎ、日義村小沢原で姥神峠方面に向かう国道361号に入った。国道361号を姥神峠方面に向かうのは1996年9月以来2年ぶりである。前回は車道が途切れる地点まで走ることが目的であったが、今回はその先の登山道に徒歩で入り、姥神峠を越える予定である。

神谷集落の車道終点(写真1)では2年前と同じように「怖がり犬」が2匹出向かえてくれた。そばの民家で飼われている犬なのだが、見知らぬ人間が相当怖いらしく、犬小屋横の斜面に滑り落ちんばかりに身をひそめてこちらを伺っている。こちらが近づくと全身の震えが止まらないほどで、番犬どころの話ではない。

デイバックに必要な物を詰め、10:20、いよいよ姥神峠に向けて登山開始。今日は朝から曇り空だったが、雲間からは薄日も射してきた。
 

1 神谷集落の車道終点 (写真拡大
  この先、国道361号は登山道となって続いている。


最初は草ボーボーながら車道と言ってもいいくらいの幅があったが、ほんの100mほどで本来の登山道の姿になった。付近はちょうど紅葉の見頃を迎えており、ゆっくり楽しみながら歩を進める(写真2)。

橋のない沢を渡ったあとは九十九折の急登区間も現れるが、ハイキング気分で歩けばそう苦にもならない。登山道には落葉が敷きつめられていていい雰囲気である。

そんな中、突如、周囲の景色が一変した。木材伐採現場が出現したのである(写真3)。登山道上には何十本もの木材が倒されたまま放置されていて、歩きにくいことこの上ない。おまけに、この付近の登山道は九十九折が続くため、ルート自体が倒された木材で分かりにくくなっている箇所も。踏み跡を慎重に追いながら何とか前進するが、これは少々ひどすぎる。おかげで当初のハイキング気分は完全に吹っ飛んでしまった。
 

2 紅葉の中に延びる登山道
  (写真拡大
3 木材伐採現場
  (写真拡大


ようやく木材伐採現場を抜けると登山道の勾配も緩くなり、11:05、登山開始から約45分で待望の姥神峠に到着(写真4)。峠付近は木々に覆われ、石造の鳥居が建っているほか、石仏も多い。

登山道の傍らには日義村観光協会設置の道標も立っており、「姥神峠頂上」の文字がうれしい(写真5)。道標が整備されているということは、やはり登山あるいはハイキングコースとして認知されているということなのだろうか。道標によると、峠から少し尾根を登ったところから御嶽山も望めるようだが、今日の天気では無理であろう。

10分間の休憩の後、11:15、楢川村羽渕に向けて峠道の後半へ踏み出した。
 

4 姥神峠頂上 (写真拡大 5 峠に立っている道標 (写真拡大


後半はカラマツ林の中の緩い下り坂から始まる。カラマツの落葉がいい具合にクッションになって非常に歩きやすい。登山道右手の谷が次第に深くなっていく。

しばらく進むと、木立が途切れ、前方の視界が開けた(写真6)。周囲の山々には紅葉の最盛期を迎えたカラマツが多く、山全体が黄色に染まっていてなかなかの眺めである。

さらに下ると、右手下方に登山道の終点となる羽渕の集落が見えてきた。集落周辺にはカエデなども加わり、紅葉がひときわ鮮やかである。

そして、11:35、峠から約20分で遂に車道に合流(写真7)。車道との合流点には手製の道標がちゃんと立っており、「左 姥神峠を経て神谷に至る」、「右 羽渕地区道路行止り」と記されている。この道標、昔風の味わい深いもので、すっかり周囲の風景に溶け込んでいる。
 

6 紅葉の山々を望む登山道
  (写真拡大
7 車道との合流地点 (道標拡大
  カーブミラーの左を登っていく道が登山道。


以降、羽渕集落内の1車線道をさらに下り、11:40、奈良井と権兵衛峠を結ぶ道路へ。国道361号姥神峠越えも無事に達成である。峠越えの登山道では誰にも会わなかっただけに、道路を行き交う車を見ると、人里に下りてきた、という実感が湧く。

そばには、村営バス「羽渕バス停」があるほか、紅葉した桜の大木の下に板張りの古びた公民館がひっそりと建っており、何となくローカル線の駅前を思わせる(写真8)。当然のことながら、姥神峠方面の国道361号を示す案内標識や国道標識はないが、道の片隅にさりげなく、「この先、R361は未開通」と書かれた小さな看板が立てられていた(写真9)。
 

8 姥神峠方面に向かう国道361号と古びた公民館 (写真拡大 9 国道未開通の案内看板

今回の姥神峠越えの登山道は、距離的にも手頃であり、ハイキング感覚でゆっくり歩くにはもってこいの道であると感じた。ただ、木材伐採現場の木材放置はいただけない(神谷に戻るとき踏み台にした木材が急に動き転倒してしまった)。伐採した木材は速やかに運び出すなど配慮がほしいところである。
 

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