国道152号 地蔵峠
ホーム登山道国道踏破記
◆概要
国道152号飯田市側車道終点から地蔵峠方面を望む
写真拡大)  

  

 
国道152号は、長野県上田市から静岡県浜松市に至る国道で、特に長野県茅野市から静岡県浜松市にかけての区間は、南アルプスの西側を南北に貫く中央構造線に沿った険しいルートとなっている。また、沿道人口が少ないこともあり、長野県大鹿村〜飯田市間の地蔵峠と、飯田市〜静岡県浜松市間の青崩峠の2ヶ所に登山道区間が残されたままとなっている。

ここで紹介するのは、2005年5月に地蔵峠の登山道をたどったときの踏破記録である。距離的には比較的短いルートであるが、途中、地形図からは読み取ることができない道程もあり、歩き応えのある内容であった。
 

◆踏破記


2005年5月21日10:30すぎ、国道474号(三遠南信道)矢筈トンネルを抜け、長野県上村に入った。国道474号は国道152号に突き当たる形で終了し、右折方向が国道152号地蔵峠方面となる。

そのまま国道152号を進めば、地蔵峠へ通じる登山道国道入口に到達するが、今回は地蔵峠頂上から登山道を下る行程をとるため、すぐに国道152号と別れて上村村道に入る。

上村村道はカーブを繰り返しながら、急激に標高を上げていく。路面は所々悪い部分もあるが、幅員には余裕があり、比較的走りやすい。しらびそ峠への道を分けると勾配は緩やかとなり、11:10、標高1314mの地蔵峠に到着。この先は、登山道を経由した国道152号が車道として復活し、大鹿村方面に下っている。

地蔵峠では、まず飯田市内で調達した弁当で腹ごしらえ。本当は登山道の途中で食べたかったが、朝食が早かったため、空腹を抑えることができなかった。

さて、地蔵峠の登山道国道であるが、実は今から8年前の1997年6月に踏破を試みるも、肝心の登山道を見つけることができなかったという経験がある。地形図では、国道152号登山道は峠から西側へ分岐しているが、現地に立つと152号登山道とは別に鬼面山へ向かうはっきりとした登山道がやはり西側に分岐しており、当時はこの登山道に気を取られてしまったのである。

今回、あらためて峠に立ってみると、鬼面山へ登っていく登山道のすぐ横に、急斜面を下っていく152号登山道をあっさり見つけることができた。しかも、入口には「秋葉道・塩の道」と書かれた小さな道標も立てられている(写真1)。

ただ、152号登山道の入口は「地蔵峠 地蔵菩薩像」の看板と南信森林管理署が立てた「国有林」の看板に挟まれた僅かなスペースをすり抜ける形になっており、一見、そこに登山道があるようには思えない状態になっている(写真2)。また、1997年当時は「秋葉道・塩の道」の道標もなかったはず。おまけにまぎらわしい鬼面山への登山道も加わっては、152号登山道を見つけられなかったのも無理はなかったかもしれない。
 

1 「秋葉道・塩の道」の小さな道標
  左下の矢印が上村方面への登山道を指している。
  (写真拡大
2 152号登山道の入口
  看板の間をすり抜けなければならない。
  (写真拡大


鬼面山への登山道を少し登ったところにある地蔵菩薩像に手を合わせた後、11:50、いよいよ152号登山道に一歩を踏み出す。

車道から見下ろしたとおり、最初の下りはかなりの急勾配。踏み跡もか細く、メジャーな登山道でないことだけは確かである。

急勾配が一段落すると、今度は急斜面にへばりついたルートとなる(写真3)。僅かな幅員しかない登山道自体が谷側に傾斜しており、しかも滑りやすい路面のため気が抜けない。実際に2、3回谷側へ足を滑らせる場面もあった。途中で再び「秋葉道」の道標が現れるが、道の歴史に思いを馳せている余裕はない(写真4)。
 

3 急斜面にへばりついた登山道
  (写真拡大
4 急斜面の途中に現れた道標
  (写真拡大


しかし、そんな危険な区間も長くは続かず、登山道入口から約15分で谷底の小川に到達。地形図を見る限り、あとはこの川の流れに沿って下っていけば、上村側の車道終点に到達するはずである。

小川沿いの登山道は至って平坦。さらに見上げれば一面の新緑。今までの区間とは一転、正に「新緑の散歩道」である(写真5)。こんな道なら2、3時間歩いても苦にならないだろう。

のんびりと新緑を愛でながら10分程度歩くと、にわかに谷幅が狭まり渡渉箇所も出現するが、流れが小さいため難なくクリアーできる(写真6)。
 

5 のんびり歩きたくなる新緑の散歩道
  (写真拡大
6 渡渉地点
  


さらに進むと、今度は広大な河原が出現(写真7)。この辺りになると、もはや道筋はなく、自分で好きな場所を歩く感じになる。それにしてものんびりとした道程だ。あとは川沿いに進むだけなのは間違いないし、この調子でいけば、最初の危険箇所はあったにせよ、今まで歩いた登山道国道の中でも最も楽な部類に入りそうである。

そんなことを考えながら歩いていると、広大な河原は見る見るうちに縮小し、やがて川沿いの平地もほとんどなくなってしまった(写真8)。いつの間にか切り立った崖が川の両岸から迫っていたのである。この先に進むには、流れの中を歩くか、斜面を登って迂回するかしか選択肢がないことは、素人目にも明らかであった。
 

7 広大な河原 8 急速に狭まった谷筋


見れば左岸の斜面に木にくくり付けられた赤いビニールひもが点々と続いており、どうやら登山道は斜面上方を迂回するルートを取るようだ。一時は、このまま楽に車道まで到達とも思ったが、やはりそうは問屋が卸さないのである。

迂回路はかなりの規模で、標高で優に50mくらいは登らされた。また、途中には斜面に架けられた木橋も出現(写真9)。谷の対岸はと見れば大規模な崖崩れ現場もあり、この付近の地形の急峻さを物語っている。

そして、斜面を登りきった頃、急に前方の視界が開けた(写真10)。川の下流側が見渡せると同時に、さらに車道らしきものが川沿いにチラッと見えている。その車道は国道152号に間違いない。あそこが今回のゴール地点である。
 

9 斜面に架けられた木橋 10 下流側の展望 (写真拡大   


とはいっても、ゴール地点までには、かなり標高を下げなければならない。その後は赤いビニールひもを頼りに、踏み跡があるのかないのか分からないような斜面を下っていく(写真11)。

そして、砂防ダムのすぐ上流側でようやく川の流れのレベルへ復帰し、斜面迂回が終了。ここまで来れば、ゴールはもう目と鼻の先で、気分的にも楽になり、ペットボトルの紅茶を喉に流し込んで一息つく。

あとは砂防ダム横の急斜面を下り、13:20、車道終点へ(写真12)。地蔵峠からの所要時間は1時間半だったが、かなりのんびり歩いたので、通常は1時間ちょっとで歩けるルートだろう。
 

11 川面に向けて登山道を下る
   (写真拡大
12 最後の渡渉で車道終点へ
   (写真拡大


この車道終点に来るのも1997年以来8年ぶり。前回は、やはり登山道が確認できずに立ち去ったのだが、車道終点付近は河原を歩く形になるので、登山道の道筋が見当たらないのも当然である。

車道終点では10分ほど休憩し、再び地蔵峠に向けて出発。結局、帰路も含めて、この登山道で他の登山者と会うことはなかった。
 


ホーム登山道国道踏破記